最新情報
第7回ファーマラボEXPO 東京 2025アカデミックフォーラム への出展のお知らせ
2025/06/06
九州大学工学研究院助教 新居輝樹先生ご講演のお知らせ
革新的な難治性固形がん治療戦略「マックトリガー」
本学より、アカデミックフォーラム(外部サイト)にて、ブース出展および口頭発表を行います。
2025年7月9日(水)~11日(金)に東京ビッグサイトにて開催される「ファーマラボ EXPO 東京 アカデミックフォーラム」におきまして、 九州大学工学研究院 助教 新居輝樹先生が、下記の要領にてご発表されます。
【ポスター発表日時】2025年7月9日(水)~7月11日(金)
【講演日時】2025年7月 11日 金曜日 11:15 - 11:45
【場所】東京ビッグサイト アカデミック フォーラム発表会場(東8ホール)
【概要】 従来のがん化学療法における強い副作用に対する解決策として、がんへの特異性が高い免疫療法が開発されてきた。しかし、全がん種の90%以上を占める固形がんの組織では免疫が抑制されている点が問題となっている。例えば抗体医薬は本来、がん抗原に結合するとこれを認識する免疫細胞が活性化してがんを殺傷するというエフェクター作用の誘導が最も重要な薬効である。しかし、がんの免疫抑制によって免疫細胞はがん組織内にアクセスすることができないため、がん抗原に結合してその機能をブロックするという限定的な効果に留まっている。CAR-T細胞療法も、がんの免疫抑制の影響でがん組織内にアクセスできないため、固形がんに対しては十分な抗腫瘍効果を発揮できず、汎用性が高いとは言い難い。このがんの免疫抑制に大きく寄与しているのはマクロファージである。がんはケモカインを産生してマクロファージを呼び込むと、M0(通常型)からM2(抗炎症型)様の腫瘍関連マクロファージ(TAM)へと分極させる。TAMは様々な因子を放出してがんを免疫の攻撃から回避できる「免疫抑制環境」に変えてしまう。このマクロファージの性質を利活用して、我々は、M2分極に応答して強い急性炎症を引き起こすサイトカインTNF-αを放出する遺伝子改変マクロファージ「MacTrigger(マックトリガー)」を開発した(J. Control. Release, 2023.)。MacTriggerをモデルマウスに静脈内投与すると、がんに集積したのちTNF-αを放出することで免疫抑制組織であるがんを炎症性組織に転換し、自己免疫でがんの治療が可能となる。一方、正常な肝臓にもMacTriggerは集積するものの、M0型を維持してTNF-αを放出しないため影響は全く見られず、副作用の少ない理想的ながん治療戦略であることが示された。すなわち、がんの免疫抑制という生き残り戦略を逆手に取り、がん特異的に炎症を引き起こして殺傷するという、従来のがん治療とは全く異なる概念である。MacTriggerはメディア等に広く取り上げられたことで実用化への社会的な期待が高まっており、AMED事業等を活用して臨床試験に向けた研究開発を鋭意進めている。